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東京高等裁判所 平成元年(ネ)2803号 判決

控訴人 和田光雄

右訴訟代理人弁護士 神山祐輔

被控訴人 西諸信用金庫

右代表者代表理事 藤堂光春

右訴訟代理人弁護士 殿所哲

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

当裁判所も、原審と同じく、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものであると判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決七枚目裏四、五行目の「秋元を同行させたとはいえ」の次に「、右預金は控訴人自身の出捐にかかるものであり、また、」を加える。

二  原判決九枚目裏八行目の次に、行を改めて次のとおり加える。

「また、右証人伊福重徳の証言及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、昭和五九年三月中旬に被控訴人上町支店に電話をかけた際、伊福支店長から、秋元が本件定期預金を担保に控訴人名義で借入れをしたことを聞き、この事実を知つたものと認められるから(この点は、原審において控訴人が認めるところである。控訴人の昭和六〇年一二月五日付け準備書面一枚目裏参照。)、もし秋元が、控訴人の主張するように、控訴人に一切諮ることなく、無断で控訴人の署名や印鑑を偽造して右の借入れをしたというのであれば、控訴人としては、当然、秋元に対して不審の念を抱き、事情を問い質した上、その責任を追及して然るべきであると考えられる。しかしながら、≪証拠≫によれば、控訴人は、その後、昭和五九年六月二〇日に鹿児島市内の田上農業協同組合に五〇〇〇万円を定期預金として預け入れる際にも、本件と同様に秋元を同道していることが認められる上、原審及び当審における証人秋元育男の証言(原審分については第一、二回)、控訴人本人尋問の結果によれば、後に、事情が次第に明らかになり、他の金融機関の事件も含めて秋元らによる預金を担保とする借入れが問題となるにつれても、控訴人は特に秋元の責任を追及することもなく(昭和六一年一月二一日に至つて秋元から甲第九号証の陳述書を徴しているが、このような説明で秋元に対する不審の念が解消するとは到底考えられない。)、控訴人に損害を与えた張本人であるはずの秋元に対する刑事告訴の手続は、実に平成元年になつて初めてなされたことが認められる。」

三~四 ≪証拠関係省略≫

五  原判決一〇枚目裏三行目の次に、行を改めて「なお、以上の次第であるから、被控訴人が、五〇〇〇万円を貸し付けるに際し、印鑑照合等の注意義務を尽くしたかどうかの点は、何ら本件の結論を左右するものではない。」を加える。

よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却する

(裁判長裁判官 吉井直昭 裁判官 小林克已 河邉義典)

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